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ゲーム系二次創作です。
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↓大甘です。パパ。
 

 合わせた体の間に爆ぜると……、甘寧の声が悲しげに呻いた。
 寝台の脇に置いた卓子から練り絹を取って後始末をしている間も、甘寧の目がいつもとは違った色で自分を見ている事は孫堅にも分かった。
「足りんか?」
 目を細めて尋ねると、孫堅の手の中から布を取り上げ、甘寧が自分の腹の上を拭いた。
「物足りなそうな顔をしているぞ、興覇」
 普段ならば体を拭いているうちに何度も欠伸を堪え、いつの間にか寝入ってしまうのだが、今日は一向に眠くもならないらしい。
「何が不満だ?」
 まだ汗で輝く甘寧の体を抱き上げ、自分の上に乗せて孫堅が尋ねるが、甘寧はただ首を振るだけだった。
「俺に言えぬような事を隠しているのか?」
 隠し事を咎めるような声で言われ、甘寧が顔を上げた。孫堅の胸に預けていた顔を上げ、眼差しはじっと虎の瞳を見詰めている。
「…そんなんじゃねぇですよ…俺が殿に隠し事なんてするはずねぇでしょう?」
 金色の髪を撫でれば、じゃれ付く猫のように甘えてくる甘寧。そんな仕草を見る事は、孫堅にとって楽しい事ではあるが、今は甘寧の様子が気に掛かる。
「興覇。ここには、俺とお前の二人きりだ。…二人しかおらんのに、何故心を隠す?」
 柔らかく細めた眼に見詰められ、甘寧がまた孫堅の胸に顔を伏せた。
「……中に…って、頼んだじゃないですか…」
 一瞬、何を言われたかわからなかった孫堅だが、甘寧の耳が赤くなって行くのを見ているうちに合点が行った。先ほど、いつものように上り詰めた孫堅が甘寧の身の内を抜け出そうとした時に、甘寧が必死の声で縋るように、自分の中で果てて欲しいと言ったのだ。
「なんだ?俺の子を孕んでくれるのか?」
 均整の取れた美しい甘寧の背に掌を滑らせて、孫堅が小さく笑うと、胸に伏せられた顔がそっと見上げてきた。
「…無理に決まってるじゃねぇですか……」
 眦を朱に染めて、詰るように見上げられては孫堅も堪らない。
「でも…出来るなら…殿の子が欲しい…です」
 言ってから、甘寧はまた孫堅の胸に顔を伏せてしまった。
「…今まで、女を羨ましいなんて思った事なかった……でも、次の世でも殿が俺を見つけてくれるなら、女に生まれ変わりてぇ…」
「随分と可愛い事を言うんだな。…何があった?」
 頭を撫でられて黙っている甘寧の顔を上げさせ、拗ねたように尖らせた唇に孫堅がそっと触れた。
「興覇…」
 唇の隙間に名を呼ぶと、甘寧の目が縋るように孫堅を見た。
「…うちの奴のところでガキが出来たんでさ……女房と挨拶に来たんですが……」
 幸せそうに微笑む女を見ていたら悔しくなったのだと言う。
「…そうか、…俺が不安にさせていたのだな」
「ちがっ…殿のせいじゃねぇです……俺が勝手に…」
「興覇、俺にもしもの事があったとしても…俺はここに、興覇のここに必ず住んでおる。…今はそれだけだ。それだけでは駄目か?」
 孫堅の拳が、甘寧の胸を叩いた。
「殿…殿にもしもなんてねぇ。俺が、俺が絶対殿を助けに行くから」
 甘寧の手が孫堅の拳を包んだ。
「絶対。絶対俺が守りますから…」
 真剣な目で見詰める甘寧に頷いて、孫堅も笑みを納めた。
「うむ。…だが、興覇は決して俺より先に逝ってはならんぞ。…そんな事があれば、俺も生きてはおれんからな」
 甘寧が何か言おうと開いた唇を、孫堅が塞いだ。
 幼いと思うほどの恋に応えようとした日から、孫堅の胸には甘寧に伝える事の無い約束が無数に生まれて行った。きっと、若い甘寧には重荷となるような約束も……、孫堅も自分の独占欲の深さに驚いていたくらいなのだ。
「興覇。俺はお前を放しはしないぞ」
 今夜の甘寧の憂い顔に、洩らさぬと思っていた約束が一つ、虎の唇を割って出た。
 …それこそが、甘寧の欲しい唯一つの言葉であるとも知らずに。
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