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↓凌甘です。
やっと、凌甘っぽくなりました。まだ凌→甘ですが
やっと、凌甘っぽくなりました。まだ凌→甘ですが
「触るんじゃねーよ!」
陣幕の外まで甘寧の大声が響いた。恐る恐る配下の者が覗き込んで、慌てて首を引っ込めた。陣幕の中では、床机に横になった甘寧の足を凌統が押さえつけていた。
「猫じゃねーっつの!暴れんじゃねぇよ」
覗いた者が勘違いしたような艶っぽい場面では無い。凌統は甘寧の怪我の手当てをしているのだ。甲冑を刺し貫いて、甘寧の脇腹を傷つけた刃は、敗走を余儀なくされた曹操の意地であったかも知れない。
「こんなもん、怪我のうちに入らねぇよ」
強がる甘寧だったが、凌統の手が甲冑外す時には流石に息を詰めた。
「…これでよく強がりが言えたもんだ」
傷の様子を見た凌統が顔を顰めた。ざっくりと皮膚を切り裂いたのは、やはり刃と言うよりは曹操の執念のように思える。
「その辺りは墨は入っちゃいねーからいいんだよ」
まだ強がりを言って起き上がろうとする甘寧の背に、凌統が顔を寄せた。
「りょ…何してんだよっ」
傷口に柔らかい感触が当たって、甘寧が振り返ると、背中寄りの脇腹の傷に凌統が口付けていた。
「なっ!てめぇ!何しやがる!」
驚いて起き上がった甘寧が痛みに顔を顰めた。
「掠り傷って言ったのは誰だっつうの。掠り傷なら舐めときゃ治るだろ?」
ほっそりとした凌統の腕は思いがけない力で甘寧を抱き寄せた。
背に身を寄せて抱きしめると、甘寧の傷口から流れた血が凌統の戦装束を濡らした。
「馬鹿、服が汚れるだろ」
「…あんたの血なら……汚くねーっつの」
耳の中に直に言われて甘寧の背が粟立った。
「こうやってるとさ……。あんたの心臓の音が俺にも伝わってくるよ……」
身を寄せて、隙間が無いほど抱きしめた甘寧の背で、凌統は安堵したような声を出した。
曹操の刃の煌きが、今も凌統の脳裏にははっきりと映っている。銀色の冷たい刃が、この肌を切り裂いたと思うと……、それはまるで嫉妬のように妬ける思いがした。
「これぐらいで死んじまうほど柔じゃねぇよ…」
甘寧が笑って振り返ろうとすると、肩口に温かい物が落ちた。
「…凌統…?」
甘寧の肩に温かく落ちたそれは、素肌の胸を滑り落ちて…幾筋にもなるほど、後から後から零れ続けた。
「泣いてんなよ。怪我してんのは俺の方だろ?」
泣き黒子は伊達じゃなかったかと、軽口を言おうとした甘寧の体を、凌統が強く抱きしめた。
「あんたが…あんたが泣かねぇから…だから俺が泣くんだろ……我慢ばっかりしやがって…」
呂蒙の亡骸を抱えて来た甘寧は泣いていた。子供のように大粒の涙を零し、しゃくり上げながら呂蒙を連れて来たのだ。……そして、それからの甘寧は辛いとも悲しいとも、…淋しいとも言わなかった。心には大きな穴が開いてしまっているだろうに…、それでも甘寧はかえって他の者達を鼓舞するように振舞った。
「見てる方が痛ぇっつーの」
「…凌統…」
「あんたの仲間は、呂蒙さんだけじゃねぇだろ?…少しは俺にも頼れよ」
「……こんな泣き虫に俺が頼れるかよ」
肩越しに、甘寧が凌統の頭を、ぽん、と一つ叩いた。
「それより血止めだろ。俺を殺す気かよ」
憎まれ口は照れ隠し……、凌統には甘寧の気持ちが伝わった。ぐりぐりと頭を撫でる手が、少しは自分を必要としてくれるだろうか……。少しでも、甘寧の痛みを癒してやりたかった。自分が呂蒙のように甘寧を見てやれるのかと言えば、それは無理だとしか言えないのだが……、それでも凌統は甘寧が一人で痛みを抱えている事が辛かった。
陣幕の外まで甘寧の大声が響いた。恐る恐る配下の者が覗き込んで、慌てて首を引っ込めた。陣幕の中では、床机に横になった甘寧の足を凌統が押さえつけていた。
「猫じゃねーっつの!暴れんじゃねぇよ」
覗いた者が勘違いしたような艶っぽい場面では無い。凌統は甘寧の怪我の手当てをしているのだ。甲冑を刺し貫いて、甘寧の脇腹を傷つけた刃は、敗走を余儀なくされた曹操の意地であったかも知れない。
「こんなもん、怪我のうちに入らねぇよ」
強がる甘寧だったが、凌統の手が甲冑外す時には流石に息を詰めた。
「…これでよく強がりが言えたもんだ」
傷の様子を見た凌統が顔を顰めた。ざっくりと皮膚を切り裂いたのは、やはり刃と言うよりは曹操の執念のように思える。
「その辺りは墨は入っちゃいねーからいいんだよ」
まだ強がりを言って起き上がろうとする甘寧の背に、凌統が顔を寄せた。
「りょ…何してんだよっ」
傷口に柔らかい感触が当たって、甘寧が振り返ると、背中寄りの脇腹の傷に凌統が口付けていた。
「なっ!てめぇ!何しやがる!」
驚いて起き上がった甘寧が痛みに顔を顰めた。
「掠り傷って言ったのは誰だっつうの。掠り傷なら舐めときゃ治るだろ?」
ほっそりとした凌統の腕は思いがけない力で甘寧を抱き寄せた。
背に身を寄せて抱きしめると、甘寧の傷口から流れた血が凌統の戦装束を濡らした。
「馬鹿、服が汚れるだろ」
「…あんたの血なら……汚くねーっつの」
耳の中に直に言われて甘寧の背が粟立った。
「こうやってるとさ……。あんたの心臓の音が俺にも伝わってくるよ……」
身を寄せて、隙間が無いほど抱きしめた甘寧の背で、凌統は安堵したような声を出した。
曹操の刃の煌きが、今も凌統の脳裏にははっきりと映っている。銀色の冷たい刃が、この肌を切り裂いたと思うと……、それはまるで嫉妬のように妬ける思いがした。
「これぐらいで死んじまうほど柔じゃねぇよ…」
甘寧が笑って振り返ろうとすると、肩口に温かい物が落ちた。
「…凌統…?」
甘寧の肩に温かく落ちたそれは、素肌の胸を滑り落ちて…幾筋にもなるほど、後から後から零れ続けた。
「泣いてんなよ。怪我してんのは俺の方だろ?」
泣き黒子は伊達じゃなかったかと、軽口を言おうとした甘寧の体を、凌統が強く抱きしめた。
「あんたが…あんたが泣かねぇから…だから俺が泣くんだろ……我慢ばっかりしやがって…」
呂蒙の亡骸を抱えて来た甘寧は泣いていた。子供のように大粒の涙を零し、しゃくり上げながら呂蒙を連れて来たのだ。……そして、それからの甘寧は辛いとも悲しいとも、…淋しいとも言わなかった。心には大きな穴が開いてしまっているだろうに…、それでも甘寧はかえって他の者達を鼓舞するように振舞った。
「見てる方が痛ぇっつーの」
「…凌統…」
「あんたの仲間は、呂蒙さんだけじゃねぇだろ?…少しは俺にも頼れよ」
「……こんな泣き虫に俺が頼れるかよ」
肩越しに、甘寧が凌統の頭を、ぽん、と一つ叩いた。
「それより血止めだろ。俺を殺す気かよ」
憎まれ口は照れ隠し……、凌統には甘寧の気持ちが伝わった。ぐりぐりと頭を撫でる手が、少しは自分を必要としてくれるだろうか……。少しでも、甘寧の痛みを癒してやりたかった。自分が呂蒙のように甘寧を見てやれるのかと言えば、それは無理だとしか言えないのだが……、それでも凌統は甘寧が一人で痛みを抱えている事が辛かった。
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